【仮面ライダーガッチャード 妄想二次創作物語 補完ストーリー第4弾「ラケシスが私服に着替えたら」4/4】

これで最終です。

「スパナ、ごめん!からかうつもりは無かったんだ。すぐに気付くと思ってた。まさか全く気づかないなんて想定外だった」

「これは全部わたしのアイデアなんだ、スパナに少しでもラケシスの事を認めて欲しかっただけなんだ。とにかくすまない。」

と言って鏡花は深く頭を下げた。

スパナは数秒経っても何も言わなかった。

この数秒はとても長く感じられた。

鏡花は恐る恐る頭を上げたがスパナの顔は向こうを向いていて見えない角度だった。

そしてようやくスパナの冷静な声が聞こえた。

「・・・鏡花さん、鏡花さんは何も悪く無いです。悪いのはこの化け物です。危うく騙されるところでした。」

そう言われてラケシスは挑発的な気持ちになった。

「あら、わたくしは嬉しかったですわ。黒鋼スパナさん、素敵なお花をありがとう。」

スパナがブチ切れかけたその時、急に周囲は大勢の子供たちの声で賑やかになった。

保育士さんに連れられた赤い帽子を被った大勢の子供達が通り掛かったのだ

ここは近所の保育園のお散歩ルートだったようだ。もちろんただ通り掛かっただけだったが何人もの子供達が三人の不穏な空気を察知して興味津々に見つめていた。カゴ車に乗った子達は隠れるようにしてじっと三人を見ていた

保育士さん達は気まずい雰囲気を払拭するように子供達に声を掛けながら立ち去っていった。

やがて周囲は子供達が来る前よりも静かになりラケシスは何も言わずスパナを見ていた。

スパナは「・・鏡花さん、あなたは・・」

と鏡花の方を少し見てから目をつぶって空を見上げた。

スパナは鏡花に対してあなたは事情を誰よりも知ってるのに、とかラケシスへの罵詈雑言とかを言い掛けたが、子供達に水を差されたお陰か、怒りより寧ろストレスによる疲労を感じ始め、これ以上何かをするのが嫌になりやめてしまった。

「本当に心底笑えないジョークだ。」

スパナは怒りとラケシスと気付かなかった自分に腹立たしさを抱えながら弱々しく去って行った。

鏡花は何も言えずに見送るしか無かった。

「ラケちゃんごめん、まさかこんな事になるとは。すまない。」

ラケシスはスパナが立ち去った方向をじっと見つめていた。

「枝見鏡花、わたくし、決めましたわ。」

「もう買ってもらった服は着ませんわ。あの人に認めてもらうまで。」

そう言いながらラケシスは不敵な笑みを浮かべた。

鏡花は何故そう思うのか理解出来なかったが、今日の事で図らずもラケシスの闘争心に火が着いた事はわかった。

鏡花はラケシスに確認した。

「ラケちゃん・・、それはもしかして守られるだけじゃ無くて一緒に戦ってくれるって事かな?」

鏡花の脳裏をラケシスがクロトーを庇ってヴアルバラドの前に立ち塞がった時の光景がよぎった。

ラケシスもその時の事を思い出していた。

「ええ、枝見鏡花、心配なのは分かってますわ。でも次はもう躊躇せずに戦いますわ。」

「ラケちゃん・・」

「さっき黒鋼スパナに会ってわかりましたわ。何かが起きる前の想像と実際は違うんだなって事が。どんな事も現実になるまでどうなるかわからないですもの。

だから、逃げてるだけじゃいつまでも自分の想像に苦しめられるだけじゃ無いのかしらって・・」

「そうか、わかった、じゃあ私も決めた。ラケちゃん用の強化スーツを用意するよ。いつまでも守ってもらうだけじゃスパナに認めてもらえ無いからね。」

「枝見鏡花・・本気ですの?」

「もちろん、でも、お姉さん達と本格的に戦う事になるけど良い?」

「もちろんですわ・・。」ラケシスは頷いた。

ラケシスの態度はまだ弱かったが、眼の輝きが増している事を鏡花は感じた。

これ以来ラケシスの服は元の冥黒スタイルに戻り、他の服に袖を通す事は無くなった。

鏡花には言わなかったがラケシスはスパナの発した「化け物」がいつまでも響いていた。全く動揺していないのにも関わらず・・。この時のラケシスにはそれが何なのか理解出来なかった。

夢も涙もこの残響の違和感も人の心の芽生えだったんだとラケシスが気づくのはずっと後の事だった。

おわり


【後書き】

最後まで読んで頂けた皆様ありがとうございます。
最初に書きましたように今回はラケシスは何故 冥黒服を着替えないのか?と言う感想から考えたストーリーで、まだまだ拙い内容ですがそれなりに本編を補完出来たのではと思っています。実は二次創作とは言え、こんな物語めいた物を書いたのはこの4作の冥黒の三姉妹の物語が初めてで、それも今年の1月の初詣の帰りに急に思いついたレベルから始まった物でした。なのでまだまだ本当にとても稚拙ですが、でもそれまでほぼ何も書けなかった事を思えば自分でもこれほど書けるようになるとは思いませんでした。2024年は自分自身の創作スキルのターニングポイントになったと思います。

ガッチャード第1話は九堂風雅と冥黒の三姉妹からスタートしました。
冥黒の三姉妹はビジュアル、戦闘力、三人が姉妹である事による絆、個性の違いが際立っている等、何もかも素晴らしく、ガッチャードの成功を確信しました。そして冥黒の三姉妹は失速する事無く終盤までの予想外の大活躍をしてくれました。東映ヒロインの歴史に新たな1ページを残してくれたと思います。

ガッチャード、明日は49話、いよいよ佳境ですね。
ラケシスの運命や如何に!?
死なないでくれ〜😥


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